- 無酸素銅
C1020は、一般に”無酸素銅”と言われる純度の高い銅材料の一種で、純度は実に99.96%以上になります。
C1020の歴史は比較的浅く、1930年代にそれまでの真空溶解法に代わり、電気炉において純銅溶湯中の酸素をCOで還元するという量産技術が開発されました。酸素含有量が無視できるレベルなので、この水素脆化と呼ばれる現象が起きず、高温環境下でも扱うことができます。
また、純度が上がると銅の長所である導電性・熱伝導性がさらに高まるものの、純度の低い銅に比べ強度は劣ります。
- タフピッチ銅
タフピッチ銅(C1100)は、非常に純度の高い「純銅」と呼ばれる銅の一種です。純度が高いため、銅本来の加工性や耐食性などの特性に優れています。純銅のなかでは最も流通しており、入手しやすい素材です。使用用途としては、非常に高い誘電率を保有するため、電気を通すことを目的とした場面でよく使われます。例として、ブスバーなどに使われています。
純度99.9%程度の純銅で微量(200~500ppm程度)の酸素を含みます。電気導電率、熱伝導率は無酸素銅と同等です。しかし、他の純銅に比べて酸素が含まれているため、加工を施すことで光沢が失われたり、塑性加工性が低下する恐れがあります。
また、600℃以上の熱で加熱すると水素脆化を起こしてしまうこともデメリットの一つです。これは、成分としてごくわずかに酸素を含有していて、その酸素は酸化銅(CuO₂)として存在しています。温度が約600℃以上になると、この酸化銅が水素と反応して水蒸気となり、内部に空洞を生じるほか、強度を低下(脆化)させてしまうことです。
- りん脱酸銅
りん(元素記号P)を脱酸剤として添加して酸素を除去した純銅です。
りんは電気伝導性を弱めてしまう性質を持っており、導電率はタフピッチ銅、無酸素銅(101%IACS)よりも若干低い(85%IACS)です。
ですが、高温に加熱しても水素脆化を起こす恐れが少ない点が非常に優秀で、溶接やろう付けを必要とする部品に適切で、給湯器やガスケットなどに用いられ管材に使われています。性質としては、特に絞り加工性や展延性に優れています。
- 黄銅(真鍮)
黄銅(おうどう、英:brass)は真鍮(しんちゅう)とも呼ばれ、銅と亜鉛との合金で特に亜鉛が20%以上のものを言います。加工しやすいので精密機械部品や水洗便所の給水管関係、理化学器械類や弾薬の薬莢、金属模型など幅広く使用されています。
また、金に似た美しい黄色の光沢を放つことから、日本では仏具や金管楽器にも多用されています。銅と亜鉛の割合によって、六四黄銅、七三黄銅などと呼ばれ、六四黄銅では黄金色に近い黄色を示しますが、亜鉛の割合が多くなるにつれて色が薄くなり、少なくなるにつれて赤みを帯びます。一般に亜鉛の割合が増すごとに硬度を増しますが、もろさも増すため、45%以上では実用に堪えません。
その他にも、被削性を高めるために鉛を添加した快削黄銅や、錫を添加し耐海水性を高めたネーバル黄銅などがあります。
- りん青銅
Sn(錫 すず)を3%~9%含む銅合金で、P(燐 りん)を0.03~0.05%添加しています。
展延性に優れており、型打加工もできる、硬い材質が特徴の銅合金です。
Pbを添加して被削性を高めた快削りん青銅もあります。弾性、耐疲労性、耐摩耗性、ばね特性に優れた材料で、ばねはもちろんのこと、歯車などにも使われます。
りん青銅は一般大気雰囲気だけでなく、淡水、海水についてもすぐれた耐腐食性を発揮します。しかし、快削りん青銅などPbを添加していると、この耐食性については悪くなります。
C5191、C5212は「ばね材」に適した材料ですが、特に高性能のばね性が必要な場合、当社では「ばね用りん青銅」を規格として保持しています。
C5191についてはSn含有率が5.5~7.0%、C5212については7.0~9.0%の含有率となっています。Snの増加は金属としての強度を上げますが、導電性の値は低下します。また展延性が必要な場合も、材料そのものが硬いため、Snの量が増えてくるとあまり適さなくなります。また、りん青銅鋳物は、JIS記号ではCAC502(旧呼称PBC2)などと呼ばれ、Cu-Sn系の成分を基本として、Pを0.03~0.1%を加えた合金で、強度、硬度、耐摩耗性の向上を狙ったもので、青銅鋳物系に比べると特に硬さに優れた特徴を示します。
また耐磨耗性も良好で、溶湯の湯流れ性もよいことから鋳造性に優れています。
- 青銅(砲金)
青銅(せいどう)鋳物は、ブロンズ( bronze)や砲金(ほうきん)とも呼ばれ、銅Cu を主成分としてすずSn を含む合金です。
耐圧性、耐食性、耐摩擦性、被削性、鋳造性に優れ、バルブ、ポンプ胴体、羽根車、 給水栓、軸受、スリーブ、ブシュなど多くに使用されています。現在のJIS記号では、CAC406と制定されてはいるものの、旧呼称のBC6の方が広く使われています。
BC 3 は、BC 6 より機械的性質が高く鉛Pb≦1%であることから環境的にも有利ですが、連続鋳造材は市場性が低く高価となります。
そのため、鉛PBが4~6%含有していても鋳物性の良いBC6が、安価で機械的性質がそれほど劣っていないことから最も多く生産されています。
- ベリリウム銅
析出硬化型の銅合金で、Be(ベリリウム)を入れて強度を上げている、Cu-Be-Co(コバルト)系の合金です。
銅合金の中でも最強の強度を持つ材料で、Beの比率の違いによりいくつか種類があります。
引張強さのほか、弾性係数も高い為、ばね用として規格化されています。
また金型材料や溶接用電極、精密機械部品としても利用されています。
ベリリウム銅25合金C1720は、銅合金の中で最高の強度と硬さをもっています。
この合金は、適切な熱処理を施すことにより、特殊鋼に匹敵する高強度と、優れたバネ性、導電性ならびに耐摩耗性、耐食性などを兼ね備えた材料です。
- アルミニウム青銅
銅とアルミをベースにした合金に、FeやMn、Niなどを添加した銅合金です。
耐力に優れており、硬さや耐食性、耐海水性、耐疲労、耐熱、耐摩耗でも優れた特性を持ちます。
特に耐海水性についてはステンレスと同等の性能を発揮することで知られますが、流れの速い場所では腐食が進行しやすくなります。
船舶部品にも使われます。色は黄金色です。
- その他銅合金
【テルル銅】
快削銅とも呼ばれ、無酸素銅にTe(テルル)を0.40%~0.60%添加することにより、被削性を向上させた材料です。放電加工用電極、トーチ火口(ひぐち)などの切削加工材に用いられます。被削性は、快削黄銅100 純銅20 に対して85を示します。
ASTM規格のC14500相当品で取り扱われております。【白銅(はくどう)】
キュプロニッケルとも呼ばれ、白色を帯びた銅合金です。高温環境下でも比較的強く、耐食、耐海水性に優れており、熱交換器用管板や復水器管に使われています。
銅とニッケルの比率90:10のC7060が一般的です。【洋白(ようはく)】
ニッケルシルバーとも呼ばれ、Cu-Ni-Znの銅合金で、一般にNiは増すほどばね性を高め、Znは強度を増し、Cuは展延性を向上させます。通常Ni10~20%、Zn10~30%の範囲のものが美麗な銀白色の光沢と優れた強度・弾性を有し、耐食性、加工性にも富んでおり、水晶振動子キャップや洋食器などに使われます。
通常は板材のC7521P、ばね材のC7701P、Pbを添加し切削性を向上させた快削洋白棒C7941Bがあります。【鉛青銅鋳物(LBC)】
すず青銅に、Pbを比較的多く加えた合金で、耐衝撃性、耐荷重性や摩擦、磨耗に優れることから摺動部品に使われます。
特に滑り軸受け性に優れていることで知られ、摩擦を受けた際に相手との焼き付きがおきにくく、なじみ性にも優れており、潤滑油に対する耐食性、小さい摩擦係数、熱膨張係数などの要件を満たす材料でもあります。
CAC603(LBC3)、CAC604(LBC4)の材料がこれに相当します。【高力黄銅鋳物(HBSC)】
黄銅に鉄、アルミ、マンガン、ニッケルなどを添加し、強靱性・硬さ・耐摩耗性および耐海水性を改善した銅合金です。用途は船舶用プロペラ、摺動部品、ナット、水圧シリンダ部品、大型バルブなどに使われています。CAC304は引張強さ755MPa以上、伸び12%以上が規格値として要求されていますので、低速高荷重の摺動部品、ブッシュ、ウオームギア、支承板などに使われております。【丹銅】
銅78.5~96.0%、残り亜鉛からなる合金ですが、銅と亜鉛の比率90:10のC2200Pが一般的です。淡紅色の色調を特徴的で、名称の由来にもなっています。
主に建材、特に室内の高級壁・扉に用いられます。